旅の話

今流行りのソロキャンをヒューストンでしたら: 巨大古代魚アリゲーターガー

巨大古代魚アリゲーターガーの泳ぐトリニティーリバー、 ヒューストンから1時間。僕は本を読みたくなったり、酒を飲みたくなったら、川に行く。

僕は本を読みたくなったり、酒を飲みたくなったら、川に行く。今、一人カヤックの上、冷たいビールを飲んでいる。他に見渡す限りだれもいない。携帯のサービスもとぎれとぎれ。自由だ。水面には怪魚アリゲーターガーが思いだしたように大きな水しぶきを上げ、はねている。時おり小さい魚たちが、何かに追われてジャンプする。4月の終わりだが日差しはきつく暑い。岸辺ではワニや巨大すっぽんが日光浴、巨大なサギやカワセミが飛び、燕の群れも水面近くを乱舞している。時折日本ではすでに絶滅したトキの群れが当然のように飛んでくる。まるで時空に忘れられた川に迷い込んだみたいだ。ここはヒューストンからたったの1時間。巨大古代魚アリゲーターガーの生息するTrinity Riverだ。今回はソロカヤックでLake Livingstonから下り、途中アリゲーターガーを釣り、川辺でキャンプして翌日にI-59につく予定だ。

川の魅力はと聞かれれば、自然が残り、あまり人がいず、自由なことだ。日本屈指のカヌーイストでありノンフィクション作家の野田知佑氏もたびたび著作の中で述べている。彼はそういうきれいで、遊べる日本の川が好きだったのだが、次第にコンクリートで固められ、ダムが作られ、泳ぐな危険の立て札に幻滅して、カナダのユーコン川に旅立つ。そこでは自由と手付かずの自然が残っていた。ただ唯一残念なのは夏でも泳ぐのには冷たすぎることらしい。実はそれらをほぼすべて網羅しているのは、カナダより南のテキサスなどの川ではないか。ついこの前アーカンソーのバッファローリバーを子供と下っていて思った。バッファローリバー(2019年 4月号参照)に至ってはここと違い水も澄んで、潜って魚が見える。ただ1時間で行ける範囲で、週末で楽しめ、さらに怪魚まで釣れるとなると、このトリニティーリバー、急に夢の川になるではないか。

流れが緩く、アリゲーターガーが水面ではねているところを見つけ、アンカーを打ち、コイのぶつ切りを針にくくり付けて、カヤックから投げる。急にリールがジーという音を立て、すごい勢いで回っていく。アリゲーターガーだ。コイをくわえて川下に泳いでいき、時々はねる。もう気分はアマゾン川探検隊。アリゲーターガーの口はかたく、ここで引いても針がかからない。5分、10分と待つ。そのうちガーが上流に泳ぐ方向を変えるとチャンスだ、だがその前に急にぷつっと糸の張りがなくなり、ウキが浮くことがほとんどだ。

何回か逃げられた後、また一つの竿にヒット。糸がどんどん川下に流れていく。さらに予備にカヤックのすぐ横に落とした方も糸が出ていく。ゆっくりなので流木か、しかし急に上流に動く。ただそのまま止まってるので、ほっておき下流にものすごい速さで引いている本命の方を待つが、ぷつんと引きがなくなる。予備の方は上流と言ってもカヤックから3mくらいのところで動かない。思いっきり引いてみる、ズーンという感じの手ごたえ。もしかしたら?リールを巻くと魚の動きが伝わってくる。とにかく魚がかかってる。しかもかなり大きい。すると次の瞬間カヤックのすぐ横でアリゲーターガーのワニのような顔が水面に突き出て、すぐ身をくねらせてジャンプ。きたー!という感じ、自分がものすごくうれしそうな笑い顔をしてるのがわかる。ガーはカヤックの下へ。釣り竿ごと沼に引きずり込まれそうになる。今度は反対側に泳ぎ、カヤックはアンカーごと、引きずられ始める。少しずつカヤックを岸の方に移動させ、引っ張るようにして、アリゲーターガーを岸につける。8か月前からトライしていたガーである。触ると魚のようにヌルにルしている。うろこはかたいがおなかは結構柔らかい。噛みついてくるかと思ったがそういうことはなく、抱えると首を振って体当たりという感じ。念願の写真を撮りたいが、周りには例によって鳥しかいない。何とか写真を撮る。針を外し逃がすころには、なんか愛着もわいてきて、彼も悠々と川に帰っていく感じで、後姿を見てると、ありがとうという感じになる。VRでない、こういう実体験は大切なんだ。

あまりの感激にこのまま一気に帰ろうかと思ったけど、川の途中でテントを張り、夜はカエルの大合唱、朝は鳥のさえずりを楽しみ、ゆっくりと川に流され次の日に帰りつきました。この川は、ちょっとしたアドベンチャー物のテレビドキュメンタリーが作れるレベルです。こんなアマゾン川巨大魚ツアーみたいなのが、1時間ほどで楽しめるヒューストンはすごいですね。

Covid-19対策で、人とあまり会わずに楽しめるところをたくさん見つけたので、また書きます。こう書くと遊んでばかりと思われそうですが、アメリカ審美歯科学会でのスマイルアートのコンテストで、患者さんを始め皆さまの投票のおかげで、優勝しました。応援ありがとうございました。

ここに載せられなかった写真はTrinity River Fishing ギャラリーにてご覧ください。

追伸、テキサス観光はさらに見やすく新しくなりました!アリゲーターガーまたはカヤッキングに興味ある人は連絡待ってます

Gulfstream 2021年06月号参照

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日本国内とだいぶ違う何かがあるテキサス。日本ではとてもじゃないけど経験できないようなところがたくさんあります。週末でも、ロングウイークエンドでも手軽に楽しめるところも多いです。南部アメリカの醍醐味を味わってください。なお、テキサス周辺のことも結構あります(笑)。